”今、自分がいちばん見たい番組みてキャラホビを目指す”というコンセプトのもとに吉田が話題のアニメに物申す!
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)で学校をサボっている孝雄。靴職人を夢見る彼は公園のベンチに座ってスケッチを描いていた。そこで、居場所をなくしてしまった雪野と出会う。彼女が歩きたくなるような靴を作りたいと、雪野に惹かれていく孝雄だったが…。6月の物憂げな空のような恋を描いた映像文学作品。

※2 宇宙の調査を行っている国連宇宙軍のメンバーとなった中学3年生のミカコと、彼女に恋心を寄せていたクラスメートのノボルの切ない想いを描く。宇宙に出た後もミカコとノボルは携帯電話のメールでやりとりをしていたが、国連軍の艦隊が地球から離れるにつれそのメールが届く時間が開いていき…。宇宙と地球に引き裂かれた少女と少年の超長距離恋愛が涙を誘う。

※3 毎日映画コンクールアニメーション映画賞受賞。日本が津軽海峡を挟んで南北に分割統治された世界が舞台。真っ白い飛行機ヴェラシーラを作って蝦夷(北海道)に立つ白い塔へ以降と約束した浩紀、拓也、佐由理の3人。ある日、佐由理がこつ然と姿を消してしまう。浩紀と拓也はその背景に白い塔の謎が関わっていることを知る。空の表現など、新海さん印の映像美が詰まった作品。

※4 アジアパシフィック映画祭最優秀アニメ賞を受賞。主人公の貴樹の小学生~中学生のころを描いた「桜花抄」、高校時代を描いた「コスモナウト」、社会人になってからの「秒速5センチメートル」からなる3部作。貴樹は小学校を卒業すると同時に離れ離れになった少女を思い続けていた。中学生になったある日、ついに会いに行くが…。誰もが通り過ぎて行く日常をすくい取った切なくも美しいラブストーリー。

※5 初の本格ジュブナイル作品。死者を蘇らせることができる地下世界「アガルタ」を旅する少女アスナの物語。ある日、「アガルタ」から来たという少年シュンと出会うアスナ。2人は心を通わせるものの、少年は突然姿を消してしまう。「もう一度、あの人に会いたい」と願うアスナの前に、シュンと瓜二つの少年シン、亡き妻との再会を切望するモリサキが現れ、地下世界へと向かうことになる。登場人物それぞれが喪失を抱えており、それらとどう向き合ってその先へ踏み出すのかが見どころ。

※6 日本ファルコムのグラフィックデザイナーとして、オープニングムービーなどを制作していた。会社員時代にグラフィックツールの使い方、映像の作り方を学んだのだとか。

世界はキラキラしている

言の葉の庭

新海さんの話が途切れなくて、どのタイミングでVTRにいくのか迷い中の吉田
――『言の葉の庭』は梅雨の時期が舞台の作品。ちょうどタイミングよく梅雨入りしたのに、今年は雨が降らない日が続いています。「劇場の客足としては降らないほうが行きやすいと思いますが、作品を見たらもう一度雨の日に見に来ようと思ってくれるんじゃないかな」と新海さん。

吉田
主人公の孝雄が雪野の足を想像して描くカットがあるんですけど、人の足を想像するって結構エロスだと思うんですけど

新海
よく考えると恐ろしくエロスなカットですね(笑)

吉田
もう見ている方は展開がわかっているとは思うんですが、孝雄が雪野の足を想像して(デザインを)描いている段階では、孝雄と雪野の関係はまだ深まっていないんですよね。孝雄は足を想像して描いている

新海
孝雄はいつかは靴を作りたいと思っているから、初めて会ったときから足を観察していたと思うんですよ

吉田
孝雄は15歳の高校生、雪野は27歳の社会人なんですよね

新海
惹かれ合っているけど、お互い属している世界が違うから、軋轢が生まれていくんです。それがどうなっていくか

吉田
先ほど自分の日常を肯定しないと自分がどうかなりそうだったという話が出たんですけど、この作品もその延長なのかなと思ったんですけど

新海
同じ気持ちは根底にあるんですけど、自主制作を始めた当時僕は27歳。今は、40歳になってそういう発散の仕方をしなくても生きていけるようになりました

吉田
僕は10代でアニオタになって37歳になりましたけど、あんまり変わった気がしないんですが、40歳になったら変わりますか?

新海
うーん…。それが成長なのかは別の話なんですが、年々生きやすくなってきましたね。あの頃に抱えていた気持ちの残響は今も体の中にあってぐるぐる廻っています。だから同じような匂いをまとった若い人に何か響く作品を作りたいという気持ちが強くあるんです

吉田
今回、新宿が舞台になっていて、その風景は見たことあるはずなのに、僕らはこの背景のような新宿を見たことがないんですよ

新海
アニメにする以上、普通に写真に撮ったままじゃ絵にする意味がないので。スタッフも表現者ですから、一枚一枚が彼らのプレゼンテーションなんです。写真で撮るのが一番リアルだし情報量も多い。でも、僕たちが記憶している風景は写真のような風景じゃないんですね。なんらかの自分の主観のフィルターがかかっていて、どうやってそれを表現するかを考えています

吉田
ということは、新海さんが見た新宿はあんなに輝いているんですか?

新海
どうなんでしょうね…。でも、新宿に限らず、ビルとか電柱とか、電線が伸びている様とか、すごくきれいだと思いますよ。レンダリングエラー(※7)とかないですし

吉田
たしかに現実はレンダリングエラーはないですね

新海
レイトレーシング(※8)で屈折を省略することもなくて、映り込みはどこまでも続いていますし。CGで描くときは、映り込みは3回までとか制限するんです。でも現実はそういう制限がない

吉田
つまり、自分でアニメを作るからこそ、この世の美しさを感じる?

新海
神秘的だと思いますよ。宇宙そのものがひとつのコンピューターであるという宇宙論がありますけど、どんなクリエイターがこのビジュアルをリアルタイムで描写しているんだろうなんて、恐ろしく思ったこともありますよ

――ここで「ちょっとスピリチュアルな話になってしまうんですが」と前置きする新海さん。なぜ新海ワールドは美しいのか。その根幹に迫ります。

新海
自分がきれいだと感じる風景の一部になりたいという気持ちがずっとありました。思春期のころが一番その気持ちが強かったですね。例えば、夕日を見ながら自転車を漕いでいたら、今、自分がそこに含まれているんだという実感が急にわいて、ふいに涙が流れたり。それだけですごく幸せを感じていたんですね。でも、もうここ20年ぐらいはないです。そこに再び近づくために美しい映像を作っているのかもしれません

吉田
新海さんにとって、アニメを作ることは経済活動だけではないんですね

新海
第一義としては生活であり、経済活動ですよ、もちろん。会社に対しての責任もありますし。何よりお客さんへの責任ですね

吉田
自分の好きなものを描くだけなら、新宿の風景を延々と描き続けるだけでもいいわけですよね。でもそれではお客さんへの責任を果たしていないと。だから、ストーリーは普遍的なテーマを扱っているんですか?

新海
それもあります。ただ、『これが好き』といえる尖った趣味がないことが僕の中ではコンプレックスというか、マイナスポイントかなと思います

――ここで、新海さんについてある疑惑を持っている番組スタッフがVTRに登場。それは当番組のプロデューサー副島P。新海作品好きを豪語する副島Pは、作品を見ながらこう思っていた…

副島P
新海さんの作品は、線路、踏切、車両がめちゃめちゃ細かく描かれています。鉄オタから見てもたまらない作品なんですよ。『言の葉の庭』で、山手線E231系、中央・総武緩行線E231系、湘南新宿ラインE233系が並ぶシーンがあるんですが、このディディールがスゴイ。鉄分が相当入っています。新海さんは撮り鉄ですか? 乗り鉄ですか?

――VTR開け、新海さんドン引きである。

吉田
今のVTRのすごいところは、鉄オタなのかを聞くのではなくて、鉄オタのジャンルを聞いているところですよ

新海
期待を裏切ってしまって大変申し訳ないのですが、どちらでもないんです。でも舞台挨拶で必ず聞かれるんですよ

吉田
かならず!?

新海
電車は好きなんですよ。電車が1時間に1本しかないような田舎の出身なので、電車に乗る人がいつも決まっていて指定席状態なんですね。好きな女の子がどこから乗って、どこに座るかが決まっていた。そういう雰囲気は好きです。でも、列車の型番まではよくわからない。モデリングには3DCGの担当スタッフがいるんですけど、おそらく彼が鉄オタなんじゃないかと

吉田
ほう…

新海
できた絵に対して、どういう風に光が反射したらきれいだとか、窓には何が映り込むのかは僕がコントロールしているので、結果的にディティールにこだわった絵になるんだと思います

吉田
おそらく鉄オタの人たちは、新海さんが美しい鉄道映画を作ってくれるんじゃないかと期待していると思うんですけど

新海
この機会に誤解を解いていただければ(笑)

【編集注】
※7 レンダリングとは、データ情報から画像などを生成することを指すコンピューター用語。例えばアニメーションの場合は、背景、キャラクター、動画エフェクトなどの素材をバラバラに作って、それをまとめて描画することで完成するが、その“まとめて描画する”ことをレンダリングという。レンダリングエラーとは、データをまとめることに失敗した状態。

※8 ここでのレイトレーシングは、3DCGを描画するときのレンダリング工程の1つで、光を追跡し、物体の映り込みやヤンシャを計算する工程のこと。物体の質感やディティールに大きな影響を与える。全ての光を計算すると膨大な演算が必要となるため、PIXARなどの世界的な3DCGアニメーションスタジオでも省略するのが普通。3回程度の反射を計算すればリアルに見えるとされる。

『言の葉の庭』はエロい!

花澤香菜

花澤香菜さんのエロスについて語る2人。「僕らが勝手に言っていることだから!」と念押しする吉田。

吉田
これまでのお話では、尖って好きなものがないとおっしゃっていましたけど、全部が尖った人ぐらい好きという可能性もありますよね?

新海
物体をどう切り取って画面に入れたら美しいかというところに若干変態めいたこだわりがありますね。例えば、水たまりの場合、空を映すのか、地面が見えるのか、半々なのかというところで、気持ちいい割合がわかる。ものの見せ方にはこだわりがあります。その結果、好きな人が描いたぐらいのこだわりが出るのかも

吉田
そのこだわりははじめからあったんですか?

新海
あったように思います。現実をどう抽象化して落としこむのか。そのルートみたいなものははじめから見えていました

吉田
僕は残念ながらその感覚ってわからないんですよ。でも作品として見たときに明らかにきれいだっていうのはわかる

新海
僕は中学生の時にラピュタを観て、雲がかっこいいと思って、現実の自分の上にある雲を見たらすごくかっこよかった。雲の見方を教えてもらったと思います。それと全く同じ回路だと思うんですけど…

吉田
僕ももちろんラピュタは見ていますけど、雲がかっこいいという感想は持たなかったですよ。むしろ飛行石をどうやったら作れるかばかり考えていました

新海
そこで人生が分かれているのかもしれないですね。僕は、飛行石はあんまり興味なかったです

吉田
同じものをみているはずなのにこんなにも感覚が違うんですね。で、突き詰め切らないと仕事にならないのかも

新海
アニメ制作の現場ってそういう人の集まりで、作品を見て、気になったところを突き詰めて仕事にしている人たちばかりかもしれません。僕のアニメの原体験は、母がもっていた雑誌に載っていた「赤毛のアン」の場面写真なんですけど、そのときに、なんでキャラクターと背景の塗り方が違うんだろうと思ったところなんですよ。そのころからビジュアルにこだわっていたんですね

――新海さんの変態的なビジュアルセンスの一端が見えたところで、フェチズムを思い出した吉田。

吉田
今回の『言の葉の庭』を見て、みんなが新海監督は足が好きすぎると思っていますよ

新海
足は嫌いな人がいないじゃないですか

吉田
嫌いじゃないですけど…そんなに好きかと言われると…。で、他の作品も見てみたんですけど、『ほしのこえ』にも足を抱えているシーンがありますし、『彼女と彼女の猫』にも足が出てきていますし。無意識かもしれないですけど、変態的にビジュアルの美しさを追求した結果、女性の足に辿り着いたんじゃないですか?

新海
今回、映画を作っていろんな人から言われて、初めて自覚したんですよ。でも今回は足の映画ではなくて、靴を作るために足を描いているんです

吉田
靴というモチーフが出てくるのは一緒に歩くというメタファーなんですよね?

新海
孝雄は靴職人を目指しているので、歩くことを助けたいという気持ちがあるんです。出会ってしまった自分には手の届かない27歳の女性に惹かれてはいるけども、理想を投影しているというよりは、自分と向き合った上で恋をしているということですね。これは雨の日に偶然出会った男女という流れゆえの特異なものでもないと思っています。

吉田
今の時代、どう出会ったってあまり関係ないですからね。蛍光顕微鏡 MT6200で知り合って結婚して幸せになる人もいますから。別に卑下して例えに出したのではないですが…。まぁ、出会いにはそれぞれありますから。あとは、僕がこの映画を見て、真っ先に思ったのがエロいだったんですよ。このエロさはなんだろうと思ったら、村上春樹の世界と同じなんですよ

新海
確かに村上春樹作品は好きですね。学生の頃はエロいんだけどエクスキューズにもなって知的にも見えるし…と思って読んでいました

吉田
今回、花澤(香菜)さんがキャスティングされていて、ちょっとみんな「ん?」っと思っているんですよ。実年齢よりも上のキャラクターですし。エロいかエロくないかで言われれば、エロくないに近いんですよね、花澤さんって。でも、雪野さんは、設定だけ見たらかなりエロいんですよ。そこに花澤さんの声が付いたことによって雪野さんが抑圧されたエロスを持ったキャラクターになって反作用で爆発寸前みたいな状態で観客に手渡されている

新海
そうなんですよ。吉田さんはそれを受け取ってくださったんですね

吉田
僕も変態ですからね

新海
雪野さんは15歳の少年からしたら確実にエロい存在なんですよ。吐息だとか、飲み方、肩甲骨、鎖骨、くるぶし、外反母趾気味の親指などで、意図的にエロく見えるように演出しています。パーツ単体では対してエロくないけど、15歳の少年から見たらエロいし、神秘的に見えるようにしています。でも雪野さんはその自覚がありませんから、あからさまに色っぽい声でお願いしたらこの雰囲気が台無しになってしまう。そういう意味でも花澤さんは適役でしたね

――「このことは秘密で!」という2人。残念ながら生放送なので放送されてしまいました。

吉田
そういうのって作品を世の中に残すのは、人によっては恥ずかしいと思ってしまうところだと思うんですけど

新海
過去の作品を思い出すとすごく恥ずかしくなることはあります。『ほしのこえ』も、今のメンタリティだったら多分作っていない。でも『言の葉の庭』は将来見直してもあまり恥ずかしくないと思います。雪野さんが色っぽいと言っていただけましたが、まずはトータルとして美しい物語として見てもらえるように作ったので、そう感じてもらえていると思います。僕のフェティッシュなところは、同じ感性を持った人には見えてくるとは思うけども、それは美しい映像を見たその先にあることだから、それは別にいいかなと思っています

――ここでトーク時間終了。今日の一筆を書いていいただきます。その間も吉田の質問は止まらず、話は尺の話に。『言の葉の庭』の尺は46分。通常の映画の尺じゃない長さになっていることが気になっていたところ、「箱のために映画があるわけじゃないのに、長さを決められているのはおかしいと思っているんですよ」と新海さん。その作品を表現するのに最適な尺というのがあるから、この作品を46分にしたのだそうです。

今日の一筆

m8_05

実は猫も好き。意外と好きなものが多いのかも。

投稿日:2017年2月10日 更新日:

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